あかるい職場応援団
厚生労働省

カスタマーハラスメントへの取組により従業員の安心感を獲得!

カスタマーハラスメントへの取組により従業員の安心感を獲得!

企業名:フリー株式会社
業種:IT・サービス
従業員数:1,083名(2022年6月時点)

担当者が周囲を巻き込み、全社的な取組へ

2022年の夏、サポートデスク(お客様からのご相談を受け付ける電話窓口等を担当する部署)から、従業員を対象とした「お前殺すぞ、こら」「なめてんじゃねーぞ」と何度も発せられるような、40分以上続くクレームを受けたと相談がありました。発言が明らかに脅迫と取れるものであったことを重く受け止めた私が社内の法務部と相談したことを契機に、対策を講じなければならないという機運となり、カスタマーハラスメント対策プロジェクトが立ち上がりました。

本プロジェクトは、(私を含む)サポートデスクのメンバーに、アドバイザーとして法務部や直属の上司を加えた5名で進めることになりました。

取組は、まず社内でカスタマーハラスメント被害の実態に関するアンケート調査(本調査において工夫した点に関しては後述)およびデータ収集から始めました。これは従業員がどのような暴言・不当な要求等のカスタマーハラスメントに該当する行為に遭遇しているかの実態を把握する目的で行ったものです。

また、カスタマーハラスメントや法律に関する専門知識を身につけることを目的とし、厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を読み込み、当社に関係する情報をピックアップしました。並行して、「なんのために対策が必要なのか」、「何を定めておく必要があるのか」、「対策をしないとどういうリスクがあるのか」等を論点とし、適宜法務部への法律的な知識の照会を行いつつ、検討を進めました。

上記の結果を踏まえ、経営層に提言を行いました。内容は、「現場で起きている具体例」や「カスタマーハラスメント対策がないことのメリット・デメリット」、「当社としてカスタマーハラスメントとクレームの線引き」等についてです。提言の後には、ポジティブなリアクションをいただくことができ、いよいよ全社的な取組みとして進められることとなりました。

2月は個人事業主のお客様の確定申告の時期でもあり、当社へのお問い合わせの数は通常時の約5倍となります。その分、カスタマーハラスメント発生がする可能性が高くなると考えられるこの時期に間に合わせるように逆算してスケジュールを立て、プロジェクトを進めました。結果、本プロジェクトの立上げから約6か月程度で、「カスタマーハラスメントに対するfreeeの考え方」の公開に至りました。

カスタマーハラスメントに対する考え方を社外へ発信

自社のサービス利用者に提供する価値を高め、従業員、パートナー企業(業務委託先企業を含む)が安心して顧客と接点をもつことを目的に、自社HPで「カスタマーハラスメントに対するfreeeの考え方」を2023年2月9日から公開しています。本プレスリリースには、「対象となる行為」「社内対応」「社外対応」について掲載しています。

「対象となる行為」では、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」に基づき、「要求の内容が妥当性を欠く場合」または「要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動」に該当する行為をカスタマーハラスメントと定義しています。具体的には、「精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)」、「身体的な攻撃 (暴行、傷害)」、「継続的な(繰り返される)、執拗な(しつこい)言動」などを該当する行為としています。

「社外対応」として、これらのような行為に該当すると当社が判断した場合、サービスやサポートの提供をお断りする場合があると明記しています。

カスタマーハラスメントに対するfreeeの考え方

図1 プレスリリース

「社内対応」に関しては、

カスタマーハラスメント専門チームの立ち上げ
専門窓口の設置及び、連携フローの周知
カスタマーハラスメント被害者のケア
適切な対応に向けた外部専門機関への相談

等の取組を行っています。

①、②については、本プロジェクトのメンバーが専門チームとなり、現場担当者/現場管理職の相談先となっています。例えば、サポートデスクでカスタマーハラスメント関係の問題が発生した場合、一次対応者が現場管理職に相談し、そこから専門チームに連絡が入る流れとしています。

③に関して、一次対応者がメンタリングを受けられる環境を整備しています。また、カスタマーハラスメント発生時の状況確認については直接一次対応者にヒアリングするのではなく、状況を把握している現場管理職等に確認することで、フラッシュバックによる二次被害が生じないように配慮しています。

④に記載の外部専門機関とは、例えば警察等のことであり、必要に応じて通報・相談することも視野に入れています。

社内向けのカスタマーハラスメント対応用ガイドラインの作成・周知

当社では、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」等を参考に、カスタマーハラスメント対応用ガイドライン(以下、“ガイドライン”)を作成して、運用しています。

ガイドラインは、8項目で構成されています(図2)。

例えば、「カスタマーハラスメントの定義」の項目では、クレームおよびカスタマーハラスメントの両方を定義し、どちらに(または両方に)該当するかどうかの判断ができるようにしています。この判断をしやすくする工夫として、事例集を掲載しました。事例集にはカスタマーハラスメントに該当する単語やフレーズを、過去に実際に受けたものや脅迫罪等に該当するもの、過去の判例等を参考に整理し、掲載しています(図3)。

他に「未然防止のアイデアも掲載しています。一例ですが、自社HPで「カスタマーハラスメントに対するfreeeの考え方」を公表することや、お電話での問い合わせに関しては録音を行い、かつその旨をお客様にお伝えする、といったものが挙げられています。

ガイドラインの目次

図2 ガイドラインの構成

カスタマーハラスメントかどうかの判断基準

図3 カスタマーハラスメントの判断基準の例

本ガイドラインは、全従業員が参加する会議や社内SNS等を利用して周知しました。今後もアップデートした際には、社内に広く周知したいと考えています。

「何もかもカスタマーハラスメントと捉えてしまうのでは」という懸念には言語化で対応

当初ガイドラインの作成にあたっては、「何もかもカスタマーハラスメントとしてしまうのではないか」という懸念の声が社内から出ていました。その懸念点を解消するため、「カスタマーハラスメントとは何か」を具体的に言語化し、文字として書き起こすことにしました。

その取組の一例ですが、先述したサポートデスク対応者に対して行ったアンケート調査の結果も参考にし、クレームとカスタマーハラスメントの判断基準を策定しています。調査の際、あえて「カスタマーハラスメント」という言葉を使わずに「あなたが対応して傷ついた対応履歴」と幅広く意見を聴取することで、どういった発言をカスタマーハラスメントとして捉えてしまう可能性があるのか、カスタマーハラスメントに該当しないが該当すると一次対応者が判断してしまう「隠れカスタマーハラスメント」行為はどのようなものがあるか、を確認できるように工夫をしました。

取組効果で社内外から反響あり

社内からは、取組を進めたことで、社内でお客様対応をしている従業員から、自分自身がハラスメントを受けるか受けないかに関わらず、安心感につながるという声をもらいました。

社外では外部のカンファレンス等でカスタマーハラスメントに関するパネラーとして登壇する機会をいただいたことをきっかけに同様の悩みを抱える企業との交流、意見交換をする機会が生まれました。他社での対応例や自社で経験したトラブル以外にも情報を得ることで自社における対応策の検討の参考になっています。

実際に製品を使用されるお客様からは、本取組について賛同のお言葉をいただくといった反響もありました。

以上

≪ 社員の健全な業務を守るため、カスハラ対策の取組を始動  |  トップの意識の高さからマニュアル策定やHPへの対応方針を公開 ≫