取組のきっかけはSNSでのつきまとい行為
企業名:タリーズコーヒージャパン株式会社
業種:飲食・サービス業
従業員数:959人(2023年5月1日現在)
取組のきっかけはSNSでのつきまとい行為
当社がカスタマーハラスメントの取組を始めたきっかけは、「当社の店舗スタッフがネームプレートの名前をもとにSNSで検索され、つきまとわれる」というトラブルが発生したことです。この報告が店舗からエリア営業担当者の上長を経由して、本社のお客様相談室(お客様からのお問い合わせを受け付ける部署)に持ち上がり、想定外の事案であることから、従来のお客様対応の方法では対応が困難だと判断し、対策を本格的に検討することになりました。
スタッフの名前を記載しない方針へ切り替え→従業員の個人情報を守る
きっかけとなったトラブルは、スタッフの名前がわかってしまうことが原因の一つでした。これを念頭に置いたうえで、お客様相談室やトレーニンググループ(店舗業務(接客等)を務める店舗スタッフの教育を担当する部署)を中心に、数か月かけて対策を検討しました。検討時には、他社・他業界の事例(どのようなネームプレートを使っているかなど)を収集しながらアイデアを出し合いました。最終的には、実際に働いているスタッフからも挙がっていた、ネームプレートをイニシャル表記に変更する案が候補となり、取締役の承認を得て正式に採用となりました。
対応方法の検討の段階では、ネームプレートをなくす選択肢もありましたが、あえて残したのは、ネームプレートの役割が大きいと判断したためです。
当社では、店舗スタッフは苗字ではなく名前で呼び合う文化があり、スタッフ間のコミュニケーションを重要視しています。ネームプレートが無いと、特に他店舗の応援に赴く場合などは、スタッフ間のコミュニケーションがとりにくくなるケースが想定されます。また、責任感を持って業務にあたってもらう目的で、ネームプレートには店舗スタッフの役職やランク等を表記しています。
結果として、本業に支障が出ない範囲で、お客様からの迷惑行為を防止できるように、ネームプレートの記載内容を変更するという対応をとりました。
また、従業員の個人情報を漏洩させないよう、レシートに掲載されるレジ担当者の欄を社員番号で表記することで、社内では担当者が確認できる一方、お客様には名前がわからないようにして、同様のトラブルが起こらないよう再発防止策をとっています。
店舗とエリア営業の風通しのよさが迅速な連携に直結
お客様からのお問い合わせについては基本的に店舗が対応しておりますが、お客様から悪質なクレーム等が入った場合はお客様相談室にて対応します。
悪質なクレーム等を受けたお客様相談室は、そのクレームの対象となった店舗、エリアの営業担当者の三者でクレーム内容の事実確認を行い、対応方法を検討し、その結果をお客様相談室からお客様に回答します。なお、これは一例です。クレーム内容は様々であるため、あらかじめマニュアルを作成して画一的に対応するというよりは、ケースバイケースで対応する方針を取っています。
エリアの営業担当者は担当店舗を常に気にかけ、高い頻度で足を運んでいることもあり、両者の間には密なコミュニケーションが取れている状態です。先述の連携ができているのは、エリアの営業担当者と担当店舗との間でこのような良好な関係性が築けていることが大きいと考えています。こういった風通しの良さが基盤にあることで、トラブル事案が発生した際も迅速な連携につながっていると感じています。
店舗単位でもお客様の迷惑行為等のトラブルに対応できるように備えています。例えば、店舗でお客様による暴言や暴力等を伴う行為が発生した際には、すぐに本社のお客様相談室や地域の防災センター、警察等に連絡するように周知しています。
また、取組のきっかけとなったトラブルのように接客業務と直接関係しないカスタマーハラスメントのケースは、被害を受けた(または事態を知った)店舗スタッフが店長へ、店長はエリアの営業担当者へ、というような流れで上位者へ報告することにしています。
これらトラブル時の事実確認に活用できるように、報告書では、お客様の情報(お顔の特徴、よく訪問される時間帯 等)や購入履歴を残すようにしています。購入した後(退店された後)に連絡が入ることがあるので、レシートやデータベースでも情報を確認できるようにしています。
「子どもを安心して働かせられる」というお言葉をスタッフのご家族からいただいた
当社の店舗スタッフには大学生や高校生のアルバイトが多いという背景があり、彼ら・彼女らが安心して働けるようにすることが、本取組を進める目的の一つでした。取組の成果として、従業員へのつきまとい被害はほぼゼロになり、スタッフから安心して働ける職場になったという声をもらっています。またアルバイトで働くスタッフのご家族からも「子どもを安心して働かせられる環境ができている」というお褒めの言葉をいただいております。