【第30回】
事例集を朝礼で読み上げる ―マンション建設から土木工事まで幅広く建設工事を手掛けるC社
取組のポイント | 所在地 |
東京都 |
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業種 |
建設業 |
従業員数 |
約800人 |
一般マンションから橋梁工事まで、様々な建設工事を実施しているC社。建設業というと下請会社との関係を含め、ハラスメントが起きやすいと言われますが、親会社の指導も仰ぎながら独自の工夫を重ねて取組みを進めている総務部の担当者3人にお話しを伺いました。
リスクの一つがパワーハラスメント
ハラスメントは最終的にコンプライアンスの問題となるので、リスクの中の一つにパワーハラスメントがあると位置づけて取り組んでいます。
業務の遂行や個人として行動するうえで遵守すべき事項を「コンプライアンスマニュアル」として定め、全職員に配布しています。この中で「働きやすい職場環境の整備」としてセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントの禁止を明確に規定しています。もちろん就業規則にも禁止規定を設けています。
社内には社長を委員長とするリスク管理委員会が設置されていて、毎月開催しています。この中で様々なリスクに関わる情報の報告、内容確認、検討が行われます。具体的な検証や対策の立案など、会社としての方針を示す必要がある場合には、コンプライアンス委員会で検討し、リスク管理委員会に報告・提言を行うことになっています。
相談窓口はコンプライアンスホットライン
コンプライアンス上の問題や望ましい行動に反する行為などの相談・通報を受けるために、コンプライアンスホットラインを設置していて、ハラスメントに関する相談も受けています。相談先は、社内ホットライン、人事相談窓口、社外の弁護士、親会社の窓口の4種類があり、どこでも選べるようになっていて、電話、ファックス、メール、社内イントラネット、ウェブサイト等、どのような方法でも連絡・相談できるようにしています。
社則にコンプライアンスホットライン規則も制定し、相談・通報した人に不利益な取扱いをすることがないこと、相談者に配慮して問題の解決に当たることを明確にしています。
独自の事例集で全員が考える
全社員を対象とした研修は人権やリスク対応など、様々なテーマを取り上げています。ただし、建設現場は空けるわけにはいかないので、全員を一同に集める集合研修は難しく、最近は社内イントラネットによるe―ラーニングを活用しています。また、新人研修や階層別研修などでは、親会社が作成した資料を活用して、人権研修なども取り入れています。
一昨年にはパワーハラスメント防止のための研修を全社員対象に集合研修として実施しましたが現場からでも交代で参加できるよう、同じ内容で支店も含めて20回ほど開催するなど工夫したつもりです。
さらに、管理職を対象としてコンプライアンスリーダー研修も実施しました。各部門においてコンプライアンスを推進する責任者としてのスキルアップを目的としたもので、今年はケーススタディも含めて、パワーハラスメント防止のための基本的な考え方を示しました。
また、グループの親会社がコンプライアンスの教育用に「CASE BOOK」を作成し、グループ全従業員に配布しています。当社ではこれに自社独自の事例をもとに、より身近なケースを追加した独自のCASE BOOKを作成、配布しました。これらのCASE BOOKにはコンプライアンスに関するいろいろな事例を取り上げていて、その中にハラスメントに関する事例もあります。それぞれの職場で毎日行われる朝礼の時に、CASE BOOKから一つの事例を読み上げ、何が問題でどのように行動すべきかについて、参加者全員で考えるという形で活用しています。繰り返し読み合わせるので、事例ごとに取り上げた日付を記入する欄も設けています。
自己申告制度を利用して状況把握
以前から自己申告制度というものがあり、毎年、仕事の状況や異動希望などを社内イントラネットから直接総務部長に提出するようになっています。この中に上司や同僚との関係や、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントを受けた、見た、聞いた、といったことがないかを記載する欄も設けています。
このほかにも、全職員が目標設定シートを記入し、目標設定時、中間時、終了時に上司と面談をする機会があります。そこでも職場内での状況を確認しています。さらに、グループ全体として、毎年1回の頻度で人権、CSRなどの意識調査を実施し、その分析結果から各社の課題などがフィードバックされます。そこで抽出された課題から啓発活動の内容なども考えています。
相談窓口をもっと活用したい
当社では社内外にいろいろな形で相談を受けられる窓口を用意しているのですが、これをもっと有効活用できないかと考えています。相談することによって不利益を受けることはないと説明はしているのですが、まだまだ相談をすること自体にためらいがあるように思います。相談に対して報復があるのではないかと心配したり、職場での立場を考えて思いとどまったり、といろいろな考えがあるのでしょう。しかし、窓口というのは設置すればよいというものではありません。問題を解決するためにあるわけなので、潜在的な問題を解決できるようにしなくてはいけないと思っています。
事例をお聞きして・・・
ハラスメントはコンプライアンスの問題と位置づけて、一つの仕組みの中で取組みを進めておられました。大企業であれば、それぞれに専門的に施策を実施することもできると思いますが、限られた陣容で様々な社会的要求に対応していくのは難しいものです。色々な課題と一緒に取り組むために、ともすると活動が薄まってしまうこともありそうですが、具体的な事例集を作って、朝礼で水平展開する、自己申告の制度を利用するなど、独自の工夫で補って活動を推進されています。
「問題が表に出てきたときにはすでに大きくなってしまっている。小さいうちに会社として手を打っておきたい。」とおっしゃった担当者の言葉が、ハラスメント防止対策の重要性を語っていると思いました。