あかるい職場応援団
厚生労働省

「社内でハラスメント発生! 人事担当の方」

 9月28日(木)29(金)、札幌・TKB札幌ビジネスセンター赤れんが前で、「職場のパワーハラスメント対策 専門家養成研修」が開催されました。この研修は企業に対してパワーハラスメント対策の導入を継続的に支援できる人材の養成を目的としたもので、社会保険労務士や産業カウンセラーをはじめ、パワハラ対策に前向きな企業の担当者などを含めた約40名が集いました。2日間に渡る熱気あふれる研修をレポートします。

開催趣旨について

 冒頭、研修講師を担当した21世紀職業財団東京本部客員講師の荒屋さんから参加者の皆さんに本研修の趣旨について説明がありました。
 「平成29年6月に発表された平成28年度の個別労働紛争の相談内容を見ると、いじめ・嫌がらせは過去最多の70,917件となり、5年連続ですべての相談のトップの件数となっています。そこで厚生労働省ではパワーハラスメント対策をより一層推進させるために、企業に対してパワーハラスメント対策の導入を支援できる人材を養成することを目的とした研修を実施することとなりました。それがこの『職場のパワーハラスメント対策 専門家養成研修』です。2日間、約12時間に及ぶ専門的な研修は、今までにない新しい試みとなります。本研修で習得したことや使用した資料などを、今後企業を支援する際などにご活用いただき、職場におけるパワーハラスメント対策を推進していただきますようお願いします」と、本養成講座の目的を伝えるとともに参加者にエールを送りました。

個々の企業にあわせたパワハラ対策を提案する力をつける

 全国で行われている「パワハラ対策支援セミナー」と、この専門家養成研修の違いはどこにあるのでしょうか? パワハラ対策支援セミナーは、パワハラ対策導入マニュアルの内容(主にパワハラ対策7つの取り組み)の周知を主とし、企業を対象としています。これに対し専門家養成研修は、個々の企業にあわせたパワハラ対策を提案する力をつけることに主眼が置かれ、提案の後も対策を実行する上で必要な支援を行うために必要な知識等を身につけるようカリキュラムが組まれています。対象は、社労士や産業カウンセラーなど企業に対して労務管理のアドバイスなどを行っている方です。

 荒屋講師はパワハラ対策について「職場のパワーハラスメントは発生した場合に適切に対応をすることはもちろんですが、このような問題を起こさないように未然に防止すること」が、より大切と強調。「企業が継続的に対応するためには、防止のための取組の基礎的な知識や関連する法令・裁判例はもちろん、企業内外の資源を活用した相談対応窓口機能の充実、組織的なメンタルヘルスマネジメントの推進、職場におけるコミュニケーション改善手法などをトータルに習得している方が、社内もしくは社外で支援する必要があります」と指摘しました。

 この研修には、これらの内容がバランスよく盛り込まれており、参加した人が企業に対してより効果的、実践的なパワーハラスメント対策導入を支援できる『明るい職場づくりの専門家』となることを目指しています。
 「パワハラは起こってからではなく、起こる前に未然に防ぐ。この視点こそ企業における継続的なパワーハラスメント対策の核心と言えます」荒屋講師の説明に、参加者の皆さんが大きく頷いていました。

 「職場のパワーハラスメント対策 専門家養成講座研修テキスト」を教材にした1日目の研修では、午前中「パワーハラスメントの現状と課題 第1章 職場のパワーハラスメントとは」「パワーハラスメント対策 第2章 職場のパワーハラスメントを予防・解決するために(前半)」、午後には「パワーハラスメント対策 第2章 職場のパワーハラスメントを予防・解決するために(後半)」を実施しました。また午後に行われた「相談対応機能 第4章 ハラスメント対策相談への対応」では、参加者が相談窓口対応者と相談者に分かれてロールプレイを実施。和気あいあいとした雰囲気の中にも真剣な表情で、相談対応の要点をシミュレーションしながら体得しました。また「第6章 メンタルヘルスへ対応」では、荒屋講師が事例をわかりやすく紐解き、具体的な対応のノウハウが伝授されました。

第2章の中で行われた、全員参加のグループワークが盛り上がる

 1日目の研修で最も参加者の目が輝いたのは、第2章のパワーハラスメントを予防・解決するためのグループワークです。題材として架空の小企業、中企業の事例をつくり、これを各自が読み込んだ上で解決法を考え、予防・解決への対応を各4人グループに分かれて討論しました。どのグループでも熱心に意見が交わされ、予定の時間をオーバーするほどの熱の入りよう。グループ討論の結果は代表者が発表し、荒屋講師の寸評が加えられ、全員に共有されました。このグループ討論の中で改めて確認されたのが、パワーハラスメント対策7つの取組みの大切さ。予防・解決に向けての基本はこの7つの取組みであり、これを各企業が全社対応としてしっかりと実践することが、パワーハラスメントを未然に防ぐ大きなキーであることが強調されました。

パワハラ対策導入マニュアル7つのメニュー、取組のポイント!

研修2日目は、職場におけるコミュニケーション課題を解決するケーススタディと修了テスト!

 2日目の講師を務めたのは、セクシャルハラスメント・パワーハラスメント防止コンサルタントで、産業カウンセラーの大橋力さん。4年前まで一部上場企業の部長職を務めており、管理職17年の経験から語られるリアルな内容に受講者の誰もが引きつけられました。研修の内容は、午前中が「第5章 働きやすい職場環境作り 労働者が生き生き働くための施策」、「第7章 パワーハラスメント関連の裁判例」の2つ。午後には「第3章 職場におけるコミュニケーション」で模擬事例をもとにしたグループ演習が行われました。

 大橋講師は「私共でパワハラ対策の好事例50社の情報をまとめる仕事があり、私も35社ぐらいの企業や組織を見て歩きました」と報告。そこで実感したパワハラ事情を下敷きにしながら、「第5章 働きやすい職場環境作り 労働者が生き生き働くための施策」の研修が行われました。これは労働者が生き生きと働くための施策と関連法令等をまとめた貴重な内容で、1.パワーハラスメントと長時間労働について、2.過労死等防止対策推進法・過労死等防止のための対策に関する大綱の制定、3.長時間労働削減推進本部の取組と「過労死等ゼロ」緊急対策、4.働き方改革、5.ワーク・ライフ・バランス、6.個別労働紛争解決システム、7.心理的負荷による精神障害の認定基準の7項目からなるもの。現在国が進める働きやすい職場環境づくりに関する取組を幅広く網羅し、パワーハラスメント対策等の施策が俯瞰できる講義でした。

 第3章の講義の後半には、模擬事例を活用した職場のコミュニケーション対策のケーススタディが行われました。講師から「地方の従業員300名ほどの製造業におけるコミュニケーション課題」が具体的に提示され、パワハラ対策の導入を支援する専門家としての対応が問われました。求められた項目は、1.なにがコミュニケーション課題か 2.さらに聞き出したいことは 3.どのような解決策を提案するか 4その解決策の優先順位は の4項目。各自で検討したあと、5人1組のチームを作り、ディスカッションを行いチームとしての答えを導きだし、これを各チームの代表者が順次発表しました。受講者の全員が、代表者の発表に熱心に耳を傾けていたのが印象的でした。

大橋さんが編集に参画したパワーハラスメント対策の好事例50社はこちら

研修の最後には、パワハラ対策専門家養成研修 修了テストを実施

 2日間の研修の最後には専門家養成研修の修了証が授与されるテストが実施されました。テストは全30問。1章から6章までの研修から問題が出題され、20分の制限時間で全員が取組み、回答しました。30問中24問以上正解で合格という高いハードルが設定されましたが、全員が一発でクリア。参加者の意識の高さが伝わってくる結果となりました。大橋さんが一問一問、ていねいに回答の解説をしたあと、参加者一人一人の名前が呼ばれ修了証が授与されました。
 2日間12時間に及ぶ職場のパワーハラスメント対策 専門家養成研修は、40名の参加者の大きな拍手とともに終了しました。

Voice

研修に参加した皆さんの声をご紹介します。

  • 今回の研修で、今まで分散していた知識がまとまり理解できたと感じたが、人に伝えるまでは達していない。今後も研修等でより深く理解し、企業の皆様のお役に立ちたいと思います。このような研修をしていただき、ありがとうございました。
  • コミュニケーションの新しい切り口(逆三角形)を学びました。事例の重要性を知りました。そのためにも事例の読み込みの必要性を感じました。
  • 当社のパワハラへの対策、働き方改革への対応を客観的に見ることができました。より良い環境へ変化させると共に、日常業務である新卒採用時の広報活動に活用させていただきます。2日間ありがとうございました。
■取材研修「職場のパワーハラスメント対策 専門家養成研修」(厚生労働省委嘱事業)
日時:平成29年9月28日(木)29(金)9:30~16:30講義およびグループワーク(両日とも)
会場:札幌・TKB札幌ビジネスセンター赤れんが前(北海道札幌市)
主催:公益財団法人 21世紀職業財団
 
■講師
公益財団法人 21世紀職業財団
セクシャルハラスメント・パワーハラスメント防止コンサルタント
産業カウンセラー 大橋 力 氏
セクシャルハラスメント・パワーハラスメント防止コンサルタント
特定社会保険労務士 荒屋理恵氏