あかるい職場応援団
厚生労働省

「社内でハラスメント発生! 人事担当の方」Q&A

知っておきたいパワハラ対策

まずはじめに

パワハラ対策の必要性は感じていますが、どこから手をつけてよいかわかりません。 
取組内容のカテゴリーを紹介します。何から始めるかは、緊急性のある取組み、優先順位が高い取組みや着手しやすい取組みなどから、企業によってそれぞれの職場に即した形で取り組み、継続して充実させていくことが重要となります。
1 トップのメッセージ
2 社内ルールを決める
3 社内アンケートで実態を把握
4 管理職向けの研修・一般社員向けの研修
5 社内での周知・啓蒙
6 相談窓口の設置、相談対応
7 再発防止
※職場のハラスメント予防・解決に役立つ参考資料はこちら
外国人労働者に対するいじめ・嫌がらせは、法律で事業主の対応が求められるハラスメントに該当するのでしょうか。 
外国人労働者も労働関係法令の適用の対象であり、事業主は適切に対応しなければなりません。外国人であること、特定の国・地域の出身や特定の国・地域にルーツがあること等についての侮蔑的な言動はパワーハラスメントに当たります。事業主は法律に基づいたハラスメント防止対策を講じる必要があります。
LGBTの人に対するいじめ・嫌がらせは、法律で事業主の対応が求められるハラスメントに該当するのでしょうか。 
個人の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動や、性的指向・性自認に関して本人の了解を得ずに暴露すること(いわゆる「アウティング」)は、パワーハラスメントに相当したり、事案によってはセクシュアルハラスメントに相当する場合があります。事業主は法律に基づいたハラスメント防止対策を講じる必要があります。
業種のせいか昔からハラスメントが発生しやすい職場の雰囲気です。トップや経営陣もハラスメント対策に全く理解がありません。 
社内アンケートの結果分析などを提示し、自社の状況を理解してもらいます。また、ハラスメント対策は法律で義務化されていること、ハラスメント発生のリスクや使用者責任等について認識を強めるため、トップや経営陣に向けた導入研修を行うことも有効です。
ハラスメント防止を強調すると指導や教育、コミュニケーションが難しくなると管理職からの反発があります。 
管理職は部下を指導・育成する責務があり、時には厳しい指導や叱ることが必要な場合があります。自身が権力・パワーを持っていることを自覚し、パワーハラスメントがもたらす自身や職場全体への影響、デメリットを理解して、日頃のコミュニケーションの取り方やパワーハラスメントととられない指導の方法を身に着けることが必要です。管理職研修などで指導法やアサーション、アンガ-マネジメントなどのスキルを身に着けていきましょう。
「言い方で変わる会話術」はこちらへ
※アサーション :相手の気持ちや考えを尊重しながらも、自分の気持ちや考えをその場に適切な表現で相手に率直に伝えるスキル
※アンガ-マネジメント :自分のアンガー(イライラや怒りの感情)を理解して癒したりポジティブな方向へ展開する等上手にコントロールするための手法
アンケートを取るときの注意点は? 
以下の点に注意しましょう。
①アンケート調査の目的を明確にし、安心して率直な回答を得られるように工夫する。
②可能な限り多くの従業員、派遣社員やパートタイム従業員なども対象として実施する。
③ハラスメントについての知識が乏しい場合が想定されるので、選択式の設問を多くし回答しやすい内容とする。
④継続して実施して、周知・啓発や教育・研修の効果を把握し、今後の取組み課題を分析する。
⑤無記名とする、回収方法などで個人が特定できないようにする。
※アンケート例はこちらへ
セクハラのない職場とするために1人1人が心がけたいこと 
●性に関する言動に対する受け止め方には個人差があり、セクシュアルハラスメントに当たるか否かについては、ケースバイケースで判断されることとなりますが、特に次のような点に注意しましょう。
①親しさを表すつもりの言動であっても、本人の意図とは関係なく相手を不快にさせてしまう場合があります。
②不快に感じるかどうかは個人差があります。
③「この程度のことは相手も許容するだろう」という勝手な憶測をしてはいけません。
④「相手との良好な人間関係ができている」という勝手な思い込みをしてはいけません。
●相手が拒否し、または嫌がっていることが分かった場合は、同じ言動を繰り返さないようにしましょう。
●セクシュアルハラスメントであるかどうかについて、相手からいつも意思表示があるとは限らないということに注意しましょう(セクシュアルハラスメントを受けた者が、職場の人間関係等を考え、拒否することができないこともあります)。
●勤務時間外の宴席であっても、歓迎会や取引先との懇親会など、実質上職務の延長と考えられる場合は、「職場」とみなされます。
●社員間だけでなく、取引先や顧客が行為者や被害者になる場合があることにも留意しましょう。
相手の意に反していれば、すべてセクシュアルハラスメントになるのですか。 
職場におけるセクシュアルハラスメントは、「労働者の意に反する性的な言動」で、性的な関係の強要といったものから、性的な冗談やからかい、
食事やデートへの執拗な誘いというものまで、その態様はさまざまです。
また、同じ言動に対しての受け止め方にも個人差がありますが、不快であるか否かは受け手の主観に委ねられています。したがって、受け手が「不快に感じ」ていれば、セクシュアルハラスメントになり得ます。

ただし、セクシュアルハラスメントに当たるかどうかの判断に当たっては、個人の受け止め方の違いもあることから、受け手の主観を重視しつつも、一定の客観性が必要となります。

一般的には、男女の認識の違いにより生じていることを考慮すると、被害を受けた労働者が女性である場合には「平均的な女性労働者の感じ方」を基準とし、被害を受けた労働者が男性である場合には「平均的な男性労働者の感じ方」を基準としてケースバイケースで判断されることとなります。

妊娠・出産・育児休業等ハラスメントのない職場とするために1人1人が心がけたいこと 
<上司、同僚は…>
●妊娠・出産等についての知識や制度について理解しましょう。
●「子どもが小さいうちは家にいた方がいいのではないか」など、自分の価値観を押し付けないようにしましょう。
●特定の人に向けた言動でなくても、妊娠・出産や育児休業・介護休業制度の利用について否定的な発言をすることは、ハラスメントの発生の原因や背景になり得ますので、注意しましょう。
自分の行為がハラスメントになっていないか注意しましょう。

<特に上司の立場にある人は、次の点にも留意しましょう!>
●妊娠中・育児中の制度を利用しながら働いている従業員に対しては、業務の状況とともに、周囲とのコミュニケーションに関しても目配りするようにしましょう。
●周囲のメンバーに隠れたハラスメント行為がないかについても注意しましょう。

パワハラ問題が起こってしまったら!相談や解決の場を設置しておきましょう

管理職が部下からハラスメントの相談を受けた時、どのように対応すればよいでしょうか 
管理職が部下から相談を受けたり、部下のメンタルヘルス不調に気づいたりする機会が多いので、その対応が解決への重要なポイントとなります。
①相談者や関係者への印象や先入観を捨て、公正中立な姿勢で受け入れ、プライバシーを尊重し秘密を厳守する。
②相談者がどのような解決を望んでいるかを把握し、尊重する。
③問題をもみ消そうとしたり相談者を責めるような言動は厳禁。
④対応が困難と思われる場合は専門家につなげる。
⑤相談者にメンタルヘルス不調の兆候が見られる場合は、心療内科等の受診を促す、行為者から避難させるなど早急に対処する。

※メンタルヘルスの問題については、「こころの耳(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)」もご覧ください。

相談窓口を設置するためにどのようなことが必要となりますか。 
相談窓口の整備は次のような進め方となります。
①相談担当者の選任
人権問題について理解を持ち、むやみに他言をしないなど周囲から信頼されるような人物が望ましい。誰もが相談しやすいように一般従業員や男女それぞれの従業員も選任しておくとよい。
②相談担当者の研修
ハラスメントの基本的事項や相談対応の留意点について専門スキルの研修等を受け資質の向上を図る。
③相談窓口の周知
利用しやすい窓口にするため、イントラネットや社内報での案内やポスターやカードを作成し配布する等繰り返し周知する。
④小規模の事務所などは外部の相談窓口を活用する方法も考えられる。
相談対応の流れを教えてください。 
相談者の訴えたいことを自由に話してもらい、時間をかけて丁寧に聴くことが重要です。まず、相談者へ秘密の保持や相談によって不利益な取り扱いがないこと、本人の意思や希望を尊重することを伝えます。
次の項目に沿って、これも本人の了解を得て記録を取りながら聴いていきます。
①行為者はだれか、相談者との関係
②問題行為がいつ、どこで、どのように行われ、相談者はどのように感じ、対応したか。
③行為者は他の人に対しても同様の行為はあるか。
④誰かに相談したか。
⑤問題行為の現在の状況と相談者の心身の状況
⑥どのような解決を望むのか。
相談の終了に当たっては、担当者は必ず、相談内容や相談者の意向など聞き取ったことについて記録をもとに相談者に確認し、認識のずれがないようにします。相談者の意向を踏まえた解決方法やこれからの手順、当面の対処の仕方などを説明します。
※相談受付票例はこちらへ

再発を防止するために行為者にはきちんと対応しましょう。

行為者に事情を聴く場合、どのような対応をしたらよいのでしょうか。 
①行為者への面接の実施や方針については、必ず相談者の同意をとる。
②面接の目的を説明し、行為者の同意を得る。
③プライバシー保護を伝える。
④名誉や尊厳を傷つけないよう留意し、はじめから加害者と決めつけるような態度をとらない。
⑤弁明の機会は十分に与える。
⑥担当者は、虚偽や隠ぺいは許さないという毅然とした態度をとる。行為者に対して、相談者の割り出しや当事者同士で話し合う等の行為を禁止する。
※行為者聞き取り票例はこちらへ
懲戒処分を行う場合の留意点は? 
第一に、ハラスメントが懲戒処分の対象となること、懲戒の事由、種類や程度を就業規則等に明記し、従業員全員に周知しておく必要があります。ハラスメントの事実が認められた場合には、人事部門等と連携を取り行為者への措置を取りますが、できる限り相談者の意向を尊重した対応に努めます。処分については慎重・公平に行うのはもちろん、当事者への説明も十分に行う必要があります。
再発を防止するためには、どのような取組みが必要ですか。 
発生した事案を個人的な問題ととらえるのではなく、職場全体の問題として職場環境の改善がさらに必要となります。
①「ハラスメントを許さない」という会社の方針を全従業員に再確認させる。
②発生原因を分析し、必要な防止対策を再検討する。
③社内で相談をしにくい雰囲気がないか、相談体制の状況を再検討する。
④労働者に対して、職場におけるハラスメントに関する意識を啓発するための研修・講習等を実施したり、管理職のマネジメント能力の向上を図るための、アンガ-マネジメントやアサーション、パワーハラスメントにならない指導法などの研修を実施する。
※アサーション :相手の気持ちや考えを尊重しながらも、自分の気持ちや考えをその場に適切な表現で相手に率直に伝えるスキル
※アンガ-マネジメント :自分のアンガー(イライラや怒りの感情)を理解して癒したりポジティブな方向へ展開する等上手にコントロールするための手法