【第29回】
既存の仕組みを活用して体制構築 ―情報システムの開発を行うN社
取組のポイント | 所在地 |
東京都 |
---|---|---|
|
業種 |
情報産業 |
従業員数 |
約420人 |
時代の流れとしてハラスメントが問題となってきた頃に、社員に対して会社としてしっかりとハラスメント防止に取り組むという姿勢を明確にする形で取組みを始めたというN社。
現在取組みを推進する立場の総務人事部長にお話しを伺いました。
最初に規定を作成
平成15年にまず、「セクハラ・パワハラ防止規定」を制定しています。何か問題が発生した訳ではありませんでしたが、社会全体でハラスメントに対する関心が高まってきて、社内でも会社としてどのように対応するのかという声が聞こえるようになってきたことで、社員に対し、会社としての姿勢を示したいということがきっかけでした。そこで、社長を委員長とする内部統制委員会の取組みの一つとしてセクシュアルハラスメントだけではなく、パワーハラスメントも併せて、同時に取組みを始めました。
規定を設けただけでは社員は読まない
セクハラ・パワハラ防止規定を制定した後、さらに「コンプライアンス規定」を設け、ハラスメントを含めて、コンプライアンス全般を規定しています。しかし、規定を制定しても、社員がそのような規定をしっかり見ることは少ないと思われるので、別途「コンプライアンスブック」を作成して全社員に配布しています。
このコンプライアンスブックに則して、毎年、全社員を対象にしたコンプライアンス研修を実施しています。テーマは毎回変えていますので、必ず毎年ハラスメントについての内容を取り上げる訳ではありませんが、この研修の一環でハラスメントについて、社員に周知徹底しています。この研修で、相談窓口について周知するとともに、通報することによって通報者に不利益になるようなことはないことをしっかり伝えています。
今年はe-ラーニングで研修を実施しました。また、新入社員に対しても、入社するとすぐにコンプライアンス研修を受けてもらっています。
相談体制は内部通報制度で
内部統制委員会の仕組みでハラスメント防止の取組みを始めましたので、相談窓口も内部通報制度を利用しています。各種法令やコンプライアンス違反の問題ばかりでなく、社内規定に反する行為やハラスメント行為の通報、及び相談の窓口となっています。
相談は匿名でも受け付けていて、社内の窓口は総務部、社外窓口として顧問弁護士が対応しています。イントラネットに相談窓口の案内を掲載すると同時に、全員に配布しているコンプライアンスブックの裏表紙に窓口の案内を掲載しています。
また、セクシュアルハラスメントに関する相談は人事の女性課長が窓口となっています。
いまのところ問題の報告はゼロ
全社員に対して、毎年、実名記入のアンケートを実施しています。また、年に2回、上司と部下の間で業績面談を実施していますので、もしかしたらそういう場で何かしらの相談があるのかもしれませんが、アンケートや内部通報の窓口経由でも、今のところハラスメント問題の報告はありません。
全く問題が上がってこないのですが、内部統制委員会でも全くないのはおかしい、顕在化していない問題はまだまだあるのではないかという議論になり、毎年の社員アンケートにハラスメントやコンプライアンス違反などの項目を増やして、潜在的なものを少しでも掘り起こしていきたいと思っています。
事例をお聞きして・・・
既存の内部統制制度を利用して仕組みを作るという工夫は、様々な取組みが必要とされる現在の会社組織の中で効率を考えた仕組みと言えると思います。
色々な施策を打っていてもまったく問題の報告がないのはどうしてなのか、という疑問に取り組み始めておられ、さらに実質的な活動につながっていくことが期待されるインタビューでした。