【第28回】
職場環境改善は労働組合のミッション ―K総合病院の職員組合
取組のポイント | 所在地 |
宮城県 |
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業種 |
労働組合 |
従業員数 |
約260人 |
病院内ではドクターと医療スタッフの力の差が大きく、ハラスメントも発生しやすいと言われますが、労働組合という立場でハラスメント対策に取り組み始めたK総合病院の職員組合。
きちんとした取組みはまだこれからとおっしゃる書記長にお話しを伺いました。
労働組合としての役割
病院の新築移転より組合の役員として活動している中で、管理職によるいじめや働きづらいという相談を組合員から受けるようになりました。労働者の要求をまとめて労働条件の向上をめざし、職場環境を改善していくというのが労働組合の本来の役割です。その役割の中でハラスメント対策も重要な課題ですので、対策に取り組むことにしました。
まずは職場委員の研修から
職場内で問題が起きた場合、組合員はまず、職場委員に相談することになります。そこで、職場委員を対象にした研修会を行うことにしました。研修の内容を充実させ、より身近な課題として考えてもらうために、研修の参加予定者に事前アンケートを実施し、その結果をもとに講義をしてもらうことにしました。
アンケートの結果、かなり高い比率でパワーハラスメントを受けたことがある、目撃したことがある、相談を受けたことがある、と回答していました。その内容も、「大声での叱責や罵声」「人格を否定するような発言」「暴言」などが上がっていました。
研修は大変好評で、その後も、毎月の職場委員会でパワーハラスメント問題で盛り上がり、職場内でも話題に上っています。病院内の会場が使用できなかったので、外部で研修を行いました。参加できなかった人もおり、院内での開催への要望を強く感じています。
組合員への周知は機関紙を活用
研修は職場委員を対象に行いましたが、職場単位に配布している組合の機関誌を通して研修の案内をしました。また、パワーハラスメント防止のパンフレットやリーフレットを配布、回覧しています。さらに、組合事務所のドアにポスターも掲示し、啓発に努めています。
また、研修の内容やアンケートの結果については、組合の年次大会の議案書に掲載することで、全組合員に周知しています。
執行部で相談対応
組合としての相談窓口はまだ整備されていないので、組合員からのハラスメントに関する相談は執行部の役員で対応しています。こうした問題は秘密を守る必要があるので、職場委員には相談しにくい状況があるようです。中には、職場委員にまず相談があり、そこから執行部に相談されるケースもありますが、執行部で対応を相談して実行しています。
相談の中にはうまく解決できる場合とそうでない場合がありますが、個人では訴えにくい上司の行動に対する問題などを、組合として受け止め、病院側に申し入れることで適切に対応してもらえるように思います。
例えば、あるスタッフが、毎朝ドクターから電話で仕事のことをいろいろと言われ、いじめられているように感じて夜も眠れず、もう辞めるしかないと思い詰めて相談に来ましたが、組合から病院の人事部門に話しをしたところ、院長名で対応してくれたことで、翌日からピタッと行為が止まったということもありました。
今後は病院側の体制と協調していく
前回実施した研修は職場委員を対象にしていたので、組合員全体を対象にした研修も実施したいと思っています。病院としても「セクハラ・パワハラ対策委員会」が2年前に発足し、全職員を対象にした研修を検討しているということなので、そちらとの兼ね合いも考えて対応していこうと思っています。
病院側の委員会は管理職で構成されているので、当然ながら組合員とは視点が異なっています。組合として研修などの対策についても病院側に提言できるようにしていきたいと思います。
また、顧問の社会保険労務士からは、組合としてのパワーハラスメント防止規程について指導をいただいていて、原案を作成しています。次期の年次大会で決定できるように準備を進めていきます。
事例をお聞きして・・・
アンケートの結果、高い比率でパワーハラスメントを受けた経験があると回答されていたことに驚きを覚えましたが、病院という組織の中では、ドクターと医療スタッフの力関係に明確な上下があるということをあらためて認識しました。そういう環境では、たとえ理不尽な行為であっても個人では抗議しにくいものです。組合が個人の問題を代弁することで、組織としての対応ができるようになる、ということは、組合活動の本質ではないかと思いました。