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厚生労働省

「社内でハラスメント発生! 人事担当の方」【第24回】「事業所を巡回して全従業員と個人面談」 ―生鮮食品から引っ越しまで、物流のK社

【第24回】
事業所を巡回して全従業員と個人面談 ―生鮮食品から引っ越しまで、物流のK社

取組のポイント 所在地

千葉県

  1. 毎年更新する自前のポスターで啓発
  2. ITを活用したアンケートや相談体制
  3. 管理本部長と総務人事課長が全員と面談
業種

物流業

従業員数

約350人

生鮮食品の運送から物流コンサルティングまで、幅広くロジスティックス事業を展開するK社。肉体労働の現場であり、まだまだ職人気質の人が多いという業界で、全国にある事業所を巡回して全員と面談をし、現状を把握しているという総務人事課長にお話しを伺いました。

従業員構成の変化がきっかけ

10年以上前から、ポスターを掲示し、問題があればその都度対策をとるなどの取組みはしていました。近年、職場にパートやアルバイト、派遣社員など、立場の異なる人の割合が増えてきて、なんとなく職場の中がぎくしゃくしだした感じがありました。そういう中で、現場の管理者やリーダーの指導がきつい、といった不安や不満が漏れ聞こえるようになり、3年ほど前から具体的な取組みを始めました。

幹部への注意喚起と社員の周知

毎月、社長を含め、全事業所の責任者と首都圏の管理職が出席する会議を開催していますが、その中でコンプライアンス研修のDVDを視聴しました。その中の1回がパワーハラスメントに関するもので、その場で社長が「パワーハラスメントは許さない」という宣言をし、各事業所でも徹底するよう指示されました。
また、必要に応じて、現場のリーダークラスを対象にして、指導者としての心構えを教育する機会があるのですが、その中でハラスメント防止やメンバーとの意思疎通、指導の仕方などについて研修をしています。  ハラスメント防止規定を策定し、新規採用者に説明するとともに、ハラスメントに関するポスターを全事業所の誰もが通る場所に掲示しています。ポスターは、アンケートの結果などを参考に、毎年、新しいものに更新しています。例えば、現在のものは、上司の機嫌が悪い、相談しづらいというアンケート結果に対して、本人たちは意識していないということがあり、それを気付かせるために作成しました。

ハラスメントに関するポスター

ITを活用して情報は本社が把握する

事業所が全国にあるので、パートや派遣の方も含め、誰でも、携帯電話から本社に連絡できるようにしています。ポスターにQRコードが表示されているのですが、携帯電話でこのQRコードを読み取るとアンケート画面に飛ぶようになっています。上司からの指示は適切か、休憩時間はしっかりとれているかというような項目もあり、いつでも書き込むことができ、現場の上司を経由せずに直接、本社の窓口に届くようになっています。窓口で情報を整理し、管理本部長に報告され、必要に応じて総務人事課で対応します。

相談窓口として、労務関係全般の相談を受ける"soudan@"というウェブサイトでの窓口を開設していて、社内外の者が利用できるようになっています。また、社内のグループウェアを使用できる者は、総務人事課に直接メールで相談することもできます。これらの相談窓口は、社内通達に記載し、職場内に掲示するようにしています。
何かあれば、「本社が直接情報を把握している」ということが、ある意味ではハラスメントに対する抑制効果を発揮しているように思います。

相談窓口

個人面談の場でもアンケートを活用

携帯電話からのアンケートは従業員が本社に対して情報を提供したいという場合に利用されるので、本社としてはある意味、受け身です。現場の状況をしっかり把握するために、昨年度から、管理本部長と総務人事課長の二人で手分けして全事業所を巡回し、パートや派遣を含めて、全従業員と個人面談を行っています。
面談の際、タブレットPCを持参し、その場でアンケートに回答してもらうようにしています。アンケート結果は社長と管理本部長、総務人事課長の3名しかアクセス権を持っていないので、何を答えても不利益になることはないことを理解してもらっています。。

事案には公正に対応

その日に来たものは必ずその日のうちに処理なければならないという職場で、忙しい時にはついつい言葉もきつくなることもあるでしょう。年に何回か相談が寄せられます。事案が発生した場合、総務人事課で精査したうえで管理本部長に報告し、問題が発生した部署の責任者と協力して事実関係の把握、解決策の検討を進めていきます。
相談者がどのような解決を望んでいるのか、よくヒアリングをしたうえで、行為者や同僚、上司等から事情聴取を行って事実関係を明らかにします。悪質な事案では懲罰委員会にかけ、処分をすることになります。
中には、被害を受けた者が、問題を解決しようとするのではなく、むしろ問題を拡大させて自分の利益を図ろうとするようなケースもあり、会社として事実関係をしっかり把握して、是々非々の立場で公正な対応をすることを心がけています。

事例をお聞きして・・・

全国に事業所を展開している場合、状況の把握や情報共有が難しいという課題がありますが、K社では携帯電話からアクセスできるウェブサイトやメールを活用して状況把握をすると同時に、管理本部長や総務人事課長が自ら全国を回って直接話を聴くなど、労力もかけて、ハラスメント防止に取り組んでおられます。こうした姿勢が会社の本気度を従業員に伝え、防止に役立っているのだと思います。
「パワーハラスメントのある職場は、言いたいことが言えない職場。業務改善やアイディアの共有ができず、仕事の効率の悪さにつながる。同じ忙しい時でも"さっさとやれよ"と言われるより、"悪いね、大変だよね"と言われる方がずっと気持ちよく動ける。」という言葉が心に残りました。

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